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ファイヤードブログ

ディジタル・パブリッシングという観点から、Webサイト制作、電子書籍制作などを。※ブログリニューアル中

プライベートでネットができなくなって変わったことといえば、部屋の中に雑誌が増えていったということだった

気がついたら部屋に雑誌が溜まっていて、「なんでおれはこんなに雑誌を買っているんだ?」という疑問が頭に浮かんだ。原因を探ってみると、それがネットのつながらない環境に新たに越してきたことによるものだとすぐに結論が出た。もともとスマートフォンを持っていなかったから、引っ越してからというものの、仕事をするところ以外では基本的にネットができなくなっていた(いまこの記事はスターバックスでアップされようとしている)。

どういう雑誌を買っているか、というのはタンスの下着を晒すような恥ずかしさがあるだろうから、そう簡単にはいかないのだけれど、いちおういま部屋を見渡して見えるものだけでも、「WIRED」、「BRUTUS」、「POPEYE」、「週刊プレイボーイ」、「GINZA」、「UOMO」、「オレンジページ」など。これに加えていくつかの専門的な雑誌もいくつかある。そして、おそらく私は明日の朝に小松菜奈が表紙の「EYESCREAM」のTシャツ特集を買ってしまうだろう(小松菜奈はもともと好きでも嫌いでもなかったが、3月に出た「GINZA」で見たときに、「あぁ。この人は表情が自由だな」と思って以来、気になっている。そしてこのたびの「EYESCREAM」の表紙もかなりいい。あ、あと、この号の「GINZA」の素晴らしさについては書いてみたいと思っている)。

EYESCREAM(アイスクリーム) 2016年 05 月号

少し脇道にそれるけれど、雑誌というものの自分の中での再評価は、引っ越し以前にも始まっていた。単調になりがちな、ブログのような形から脱しきれていないウェブメディアのデザインをどうしようかと考えていたときに、ヒントにしようとしてたどり着いた先が、他のWeb媒体ではなく紙だったからだ(とはいえ結局、紙の自由さには現状のフロントエンドの技術基盤じゃ敵わなかった。が、Webが紙に勝つこともあると信じている)。ちなみに、特にデザイン的に優れていると思ったのは、マガジンハウス刊行の雑誌たちだった。

で、ここからが本題で、といってもすでに本題は長いタイトルで語りつくしているからそれを繰り返すけれど、プライベートでネットができなくなって変わったことといえば、部屋の中に雑誌が増えていったということだった。ついでにいえば、新聞もちょくちょく買うようになった。ついでにいえば、ネットポルノを見ることがなくなった。

「雑誌がネットに食われる」という状況を、自分の部屋が明らかにしていることに驚いた。クックパッドにアクセスできれば、「オレンジページ」は買わなかったかもしれないし、LOOKBOOKやTumblrにアクセスできれば、ファッション誌は買わなかっただろう。

これは忌々しき状況であり、愛すべき雑誌文化を殲滅しようとするネットメディアは、常時接続が当たり前となったインターネットにおける新奇性(柄谷的にいえば、「ニューズ」)のみに依存し、個性や独自性を提供しようとする意思が薄い。ネットが騒いだ「センテンススプリング」とて、週刊誌である「センテンススプリング」が取ってきた情報ではないか。こういう状況のもとで、ネットはいずれ言論や表現までも根こそぎにしかねない。フリーライド、引用という名の剽窃、バズといういつの間にか至上価値として祭り上げられているネタ性、断片的な接触を重ねることの世界への無関心、もううんざりだ……。

こういってみたところで、できることといえば、せいぜい出版物に対する軽減税率導入を主張するとか(あのな、おれは金ないけど消費税10%になっても変わらず本とか雑誌とか買うから、安心しろ)、「インターネットが人類を破壊する」みたいな憂いに満ちた言説を垂れ流すくらいのことしかできないだろう。そういうことではない。

じゃあ、どういうことなのかというと、少なくとも私自身に関して言えば、すでに自身の印刷出版物を作り始めているし、文フリで売られる予定の同人誌(文芸誌よりの)の製作に携わらせてもらっているし 、そろそろインターネットを自宅に導入したいと思っているし、ぜんぜん進んでいないけれど「包括的なウェブタイポグラフィについてのテクストを目指す草稿を執筆しています」し、印刷について調べながらCent OSでLinuxサーバーを構築する方法を模索しているし、他にも、まぁ、雑多なことをしている。

つまりは、「人生の質を高める」……いや、これはいま私の眼の前に座っている婦人が広げているほんのタイトルだった。「あなたはまだ運命の人にであっていない」だって?大丈夫か?ソウルメイト?なんのことだ?……すまない、ちょっと邪魔が入った。とにかく、まぁ、抽象的にいうならば、場所をつくり、形を与えるということではないのか。(続く)